建築という言葉
ここまで建築パース及び様々なパースについてお話してきました。
ここまで見た頂いたように、パース、建築パースについて語るときには、建築を切り離して語ることはできません。
パースそのものが建築や土木と密接に関わっているからです。
折角パース、建築パースに関して理解を深めていただいたところなので、ここからは建築そのものに関してちょっと考えていくことにします。
私達の周囲を見渡しても、実に多様な建築で溢れています。
自宅、職場、学校、病院、デパートや銀行、郵便局、駅等など、私達が普段足を運んだり、或いは目にする施設、公共施設等もさまざまな形と顔を持った建築の数々で、言い換えれば「建築のデパート」です。
建築は私達の生活や社会に非常に深く関わっています。
私たちは普段全く何気なく建築と言う言葉を使いますが、言うまでもなく建築は英語のArchitectureの訳語です。
ですが意外な気もするでしょうか、そもそもArchitectureの訳語は建築ではなかったのです。
明治初期には「造家」という訳語が当てられていたそうです。
そこへ当時の有名な建築史家で建築家でもあった伊東忠太が1894年に「アーキテクチュールの本義を論じて其の訳字を撰定し我が造家学会の改名を望む」という名の論文を発表し、その中で「世のいわゆるFine Artに属すべきものにして、Industrial Artに属すべきものに非ざるなり」と述べています。
つまりArchitectureを工学ではなく、総合芸術としての捉え方から捉えようと主張したのです。
そこで単に建物を建てるといったイメージの強い「造家」に代わり、芸術作品を創造するという意味合いを込めた「建築」という訳語を使うように提唱したのです。
伊東忠太のこうした提案に賛同する形で、1897年に造家学会は建築学会と改称され、翌年には当時の東京帝国大学工科大学造家学科も建築学科に改称されています。
現在私たちがごく普通に用いている建築と言う言葉からも、先人のこうした知恵と、建築に対する情熱や思い入れが窺い知れるようで、建築という訳語に関するエピソードも実に興味深いものがあります。
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人間が人間のために造る、それが建築
建築という言葉を定義付けて言うなら、人間が活動するための空間、スペースを内部に持った構造物を、計画から設計、施工そしてそれが完成してから人間が使用するに至るまでの行為の過程全体、あるいは一部のことだと言えます。
また、そのような行為によって作られた構造物そのものを指すこともあります。
私たちは普段そうして出来上がった構造物(簡単に言えば建物)を建築と言うこともありますが、ですが本来ならこの後者は建築物と呼ぶのが適切でしょう。
ここまで建築と言う言葉を難しく定義付けしましたが、この中では「人間が活動する?」がポイントだと思います。
言い換えれば人間が人間のために造る、それが建築だと言えます。
無論科学技術の発展と共に、建築に関する技術も飛躍的に向上し、現在ではあっと驚くようなデザイン、機能を持った建築物が世界のいたるところにたくさん建てられています。
ですが建築が人間の産物である以上、そこには常に人間の叡智と想像力とが結集されているのです。
そういう意味では百年以上前の伊東忠太の指摘は的を射ていると思います。
皆さんも身の回りの建築物を見る機会があったら、その人々によって建築物に込められた思い、その建築物の息吹を感じ取ってみませんか。